クリスマスのものがたり
作・フェリクス・ホフマン (福音館書店)
クリスマスが本来イエス・キリストの誕生を祝う日だということは、多くの人が知っていることでしょう。
でも実際にキリストが生まれたときの詳細については、知らない人も多いのではないでしょうか。
ホフマンの「クリスマスのものがたり」は、基本的には聖書の記述に忠実に、余計な脚色は加えず淡々と、当時の出来事を伝えてくれる絵本です。
なぜイエスがベツレヘムの馬小屋の中で生まれる羽目になったのかもわかりますよ。
喜びをもって語られることの多いキリスト誕生ですが、その陰ではヘロデ王による大規模な幼児虐殺が行われたりもしています。
喜びのあるところには憂いがある、いや喜びが深ければ深いほど、憂いもいよいよ深いものとなるのかもしれません。後に救い主として生きる幼子イエスが背負わされる業の深さが、すでに垣間見える気もします。
ホフマンの絵はラフでありながら重厚、ことに羊飼いたちの前に天使が現れる場面などは何とも言えぬ崇高さを感じます。
個人的に大好きな画家フェリクス・ホフマン。日本の子どもたちに向けて描き下ろしたというこの絵本が、彼の最後の作品となりました。