今月のおすすめ絵本

アンドルーのひみつきち

 作・ドリス・バーン  (岩波書店)

五人兄弟の真ん中のアンドルーはモノづくりが大好き。次から次へと大仕掛けでユニークな作品を作り上げるのですが、家族はだれも理解を示してくれません。せっかく作った素晴らしい作品も「じゃま」「どかして」「もとにもどして」と言われる始末。そこでついに、自分だけの秘密基地を作るべく、アンドルーはこっそり家を出ていくことに…。

『アンドルーは、ひとりでじっくりかんがえた。そして、あるうららかな春のあさ、ついにこころをきめたんだ。』

この、凛とした感じがとてもいい。自分に必要なものが何かわかっていて、迷いがない感じがします。彼が作る様々なモノは、どれも自分がいいと思ったものばかり。邪魔と言われたからといって、モノづくりをやめる気はさらさらないのです。

そして遠く離れた原っぱで秘密基地を作るアンドルーのもとに、なぜか次々と村の子供たちが集まってくるのですが…。

子供には子供の世界があって、どんなにそれが大人の世界とはかけ離れたものであろうとも、子供にとっては大切で必要な世界。それをついつい、大人の都合で邪魔扱いしてしまうことって、あるんですよね…。ネズミを飼っちゃダメとか、オーブンで泥のクッキーを焼いちゃダメとか、机の引き出しにタンポポの綿毛をつめてちゃダメとか。

そんな大人の都合への、堂々たる反抗。秘密基地。

今やすっかり子供から反抗される立場になってしまった私ですが、読んでいるとワクワクしてくるから不思議です。秘密基地って、なぜか気持ちを高揚させる不思議な響きがありますよね。

でも、きっとどんなに年を取っても、自分だけの秘密基地ってずっと必要なんだろうなと思います。自分のための、自分だけの、でも出来ることなら誰かとちょっぴり共有し合える、孤立しない秘密基地。それぞれの世界をそれぞれが許容しあえる、秘密基地集合体のような世界。不可能でしょうか?不可能じゃない気が、してくるんですよ、この絵本を読んでいると。

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