アンネの木
文・イレーヌ・コーエン・ジャンカ 絵・マウリツィオ・A.C・クゥアレーロ (くもん出版)
アンネ・フランクが2年の月日を過ごした隠れ家の裏庭には、大きなマロニエの木が立っていました。アンネの日記の中にもしばしば登場する木です。
息をひそめるような隠れ家生活の中でも、アンネは窓ごしに見えるこのマロニエの木を通して四季を感じ、自然の息吹に心をはずませ、いつか訪れる素晴らしい未来について夢見ることを忘れませんでした。春が来れば空へ伸びるように花を咲かせるマロニエの姿は、アンネにとって希望そのものであったのかもしれません。
そんなアンネののびやかな感性と、彼女が辿った運命について、老いたマロニエの木がしずかに語ります。
戦争によってあらゆる自由を奪われ、人間らしく生きる権利すら奪われても、心の自由は失わなかったアンネ。けれども戦争は彼女の命を奪いました。そのどうしようもない事実を、私たちはどのように受け止めればいいのでしょうか。
一本の木が語るアンネのこと…。それは今現在も繰り返され続けている、現実の物語です。