あさになったのでまどをあけますよ
作・ 荒井良二 (偕成社)
朝が来て、窓を開ける。窓の向こうに広がるのは、いつもと変わらぬ見慣れた景色。ただそれだけのことが、どんなに得難くしあわせなことなのか、普段私たちはあらためて考えてみたりはしません。何ごとかが起こるまでは。
自然あふれるどこかの片田舎、あるいはビルが立ち並ぶ大都会、描かれているのは様々な国や様々な土地の景色です。おそらくそこに暮らす人々にとってはそこにあるのが当たり前の、いつもの風景。でもどの風景も息を飲むほどに美しい。朝の光の下、鮮やかで艶やかで、まるでそこに流れる風の匂いまで感じるよう。そしてページをめくるたび、繰り返されるシンプルな言葉。
やまは やっぱり そこにいて きは やっぱり ここにいる
まちは やっぱり にぎやかで みんな やっぱり いそいでる
だから ぼくは ここがすき
どうしても、2011年のうちにこの絵本を出したかったという作者の荒井良二さん。当たり前の景色が根こそぎ奪われた町で、自分たちに出来ることは何かと考えたとき、それは朝になればカーテンを開け、寒くなればドアを閉めるという、当たり前の日常の感覚を呼び戻すことではないかという考えに至ったそうです。
そんな思いの詰まった、ただただ美しい絵本。ありふれた日常の繰り返しの中に宿るしあわせについて教えてくれます。