今月のおすすめ絵本

バブーシュカのおくりもの

 文・サンドラ・アン・ホーン 絵・ソフィー・ファタス (日本キリスト教団出版局)

心の中にぽっかりとあいた穴を埋めるため、毎日掃除に明け暮れているバブーシュカ。

なぜ心にそんな穴を抱えているのか詳細は明かされはしないけれど、何だかきゅっと切なくなるような設定です。

彼女は今、自分を守ることに必死。忙しくさえしていれば、悲しいことを忘れていられる気がするのです。だから、救いの王が生まれたという天使の囁きや、東から来た博士たちの誘いにも心が動きません。

けれども、生まれたばかりの王が、満足な産着もなく馬小屋の飼葉桶の中に寝かされていると聞き、必要なものを届けようと贈り物を持って出かけます。

ところが道中、困っている人に出会うたび、次々と用意した贈り物を渡してしまうバブーシュカ。渡すものがなくなったバブーシュカは、王に会うのを諦めてトボトボと帰路につくのですが…。

 

聖句に「最も小さい者の一人にしたのは、すなわち、わたしにしたのである」という言葉があります。バブーシュカの行いはまさにそれで、その後、すてきな奇跡が彼女に訪れるわけですが、それ以外にも様々な示唆に富んだ物語と言えるのではないでしょうか。

満たされぬ心を忘れるために、掃除ばかりしていたバブーシュカ。

心を閉じているときには、目に見える汚れだけが気になるもの。けれどひとたび心をひらけば、目では見えなかった大切なものが見えてくる。では心をひらくとは…?

それは、自分の心の穴を、そのまま認めて受け入れることなのかもしれないなぁ。

最後のページの、満ち足りた様子のバブーシュカを見ながらそう思いました。

受け入れたからこそ、満たされる。それはとても困難をともなう作業ではあるけれど…。

 

ちなみにロシアの民話では、クリスマスのプレゼントを配るのはサンタクロースではなく、バブーシュカと呼ばれるおばあさんなんだそうですよ。








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