今月のおすすめ絵本

ドラゴンのお医者さん

 文・パトリシア・バルデス  絵・フェリシタ・サラ(岩崎書店)

爬虫類を愛した女性、ジョーン・プロクターの伝記絵本。ちなみにこの絵本は「世界をみちびいた知られざる女性たち」というシリーズの第一冊目。

1923年、ロンドン動物園に爬虫類担当の学芸員として迎えられ、豊富な知識と最新の技術を駆使して新しい爬虫類館を設計したジョーン。その頃、女性が責任者として活躍することはまだ珍しい時代でした。さらにジョーンは、当時ほとんどその生態が知られていなかったコモドドラゴンを爬虫類館に迎え、詳細な観察記録を学会で発表します。

コモドドラゴンは体長9メートルとも言われ、車よりも速く走り、力は雄牛よりも強いという、肉食の凶暴な生き物として恐れられていました。しかしジョーンはそんな先入観にまったく囚われることなく、深い愛情でドラゴンに接し、彼らが実際にはそんなに大きくも速くもなく凶暴でもないこと、むしろおとなしくて優しい生き物であることを証明してみせます。人々はジョーンを勇敢だと称えますが、彼女にとって真に勇敢なのは、物静かで注意深い爬虫類の生き物たち。病弱だった子供時代から、彼女はずっと爬虫類たちと心を通わせてきたのです。

表紙が素敵ですよね。知的で、愛情深くて、好奇心と探求心にあふれたジョーンの表情が印象的です。

Homeへ         収録絵本一覧へ

inserted by FC2 system