どうぞのいす
作・香山美子 絵・柿本幸造 (ひさかたチャイルド)
うさぎさんが作ったちいさな椅子。『どうぞのいす』という立て札をつけて大きな木の下に置いていきます。
「おや なんて しんせつな いすだろう」
通りかかったろばさんは、ほんの少し休憩をするつもりで、背中に背負った重いかごを椅子の上に置きますが…。
「どうぞ」の意味が取り違えられて、続いて訪れる動物たちが次から次へとある行動を。その間、何も知らずに気持ちよく昼寝をしていたろばさんは、目を覚ましてびっくり仰天。椅子に置いたかごの中身は思いがけないものに変わっていたのです。でもきっとろばさんにとっても、決して悪くない出来事だったはず…。
「あとの ひとに おきのどく」
訪れる動物たちが繰り返す、このやさしい言葉。誰の目を気にするわけでもない、ただ次に訪れる見知らぬ「誰か」を思いやる純粋な気持ち。その気持ちがつながる場所としての『どうぞのいす』
ろばさんのかごの中に入っていたのは、そんな見えない善意だったような気もしますね。