今月のおすすめ絵本

ふゆのうま
 作・手島圭三郎 (絵本塾出版)

冬の始まりをこんなふうに抽象的かつ的確に描いてみせた絵本は、なかなかないのではないでしょうか。

秋が終わり、北国に冬がやってくる。その様子が、青い空一面に咲き乱れる大輪の花や、空を翔ける無数の鹿といった、およそこの世のものとは思えない幻想的な景色として描かれています。幻想的とは言え、ひとつひとつの風景にはどっしりとした力強さがあって、それが妙に現実味を感じさせる。きんと透きとおった空の冷たさや、どうっと吹き付ける寒風の鋭さが、どれも本当のことのようにこちらに迫ってくるのです。そして豪雪の訪れを感じさせる真っ白な大フクロウの姿の何と恐ろしいこと…。

版画絵だからこその力強い線と、版画絵とは思えないような繊細でたおやかな線、そしてくっきりとした水色が織りなす世界。

秋から冬へ、ひとつの季節の変わり目が美しく描かれています。

 

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