今月のおすすめ絵本

ジョナスのかさ
 文・ジョシュ・クルート 絵・アイリーン・ライアン・イーウェン (光村教育図書)

18世紀のイギリス、ロンドンでは、傘はまったく一般的な道具ではありませんでした。雨の国なのに不思議な気がしますが、当時の上流階級の紳士たちは、雨の日は馬車に乗るもの、傘は横から召使にささせるものと考えていました。傘は主に女性か、あるいは馬車を手配することのできない貧しい者たちが使うもの、男性が持つなんて「みっともなくて恥ずかしい」シロモノだったわけです。

そんな時代に、濡れるのが大嫌いという理由で、富裕層であるにもかかわらず傘を使い続けた男ジョナス・ハンウェイ。女々しい奴、貧乏人、と周囲からどれだけ揶揄され、また批判されようとも、30年間ぶれずに傘を使い続けた結果、次第に傘はイギリス国内に普及していったのです。

海運業に携わり、世界各国を旅していた彼は、早くから傘の実用性に気づいていたのかもしれません。

 

どんな時代においても、非常識を常識に変えていくというのは並大抵のことではありませんが、ひとりの人間のアクションがきっかけとなって時代が変化していくというのは、やはり興味深いものです。人間の文化の歴史とは、こういう出来事の連続なのではないかとあらためて感じますね。

 

傘を持ち歩いた最初の男性のロンドン市民、ジョナス・ハンウェイ。

彼はまた、孤児の養育や煙突掃除人の保護などにも尽くした大変な慈善家だったようですよ。

 

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