今月のおすすめ絵本

かさをささないシランさん

 文・谷川俊太郎+アムネスティ・インターナショナル  絵・いせひでこ (理論社)

雨に濡れて歩くのが好きなシランさん。ところが、傘をささないという理由だけで逮捕されてしまいます。理由は他の人と違うことをしているから。

一見、極端にも思えるこの設定は、読む者を道徳的に諭すための単なる寓話と受け流しておけばよいのでしょうか。

しかし似たような理由による理不尽で不当な差別は、この日本でもいたるところで見受けられます。たとえば福島から転校してきたという理由だけで「放射能」「菌」と呼ばれる不条理を被らねばならなかった一部の子どもたちの現実。あるいは移動を制限されていたコロナ禍の最中、他県のナンバープレートをつけているだけで石を投げられてしまう車、また今国会で揉めに揉めたLGBTQ法案可決までの道筋で明らかになった、国民感情を分断するほどの根強い偏見や差別感情、同じく大きな批判を浴びている入管難民法改正案…。

いったい、絵本が示す「寓話」と我々を取り巻く「現実」との間にどれほどの違いがあるというのでしょう。そう思うとぞっとしませんか。

『本当にこわいのは、人の頭にある考えだ、それは見えないからだ』

 

この絵本を作った国際人権NGO団体「アムネスティ・インターナショナル」については、公式ホームページでその活動の詳細を知ることができます。日本を含む世界のここかしこで一体なにが起きているのか―――我々のちっぽけな想像などはるかに凌駕するような、信じがたい「現実」がいくつも紹介されています。同時にまた、不当な投獄や拷問、深刻な人権侵害への非難の署名活動が、少しずつでも確実に喜ばしい結果を勝ち取りつつある様子も、細かく報告されています。

 

アムネスティ・インターナショナル https://www.amnesty.or.jp/

Homeへ         収録絵本一覧へ

inserted by FC2 system