今月のおすすめ絵本

賢者のおくりもの
 文・オー・ヘンリー 絵・リスベート・ツヴェルガー (冨山房)

イエス降誕の夜、東方の三博士が持ってきた贈り物は黄金(王位の象徴)乳香(祈りの象徴:乳香は礼拝に使う香料)没薬(死の象徴:没薬は死体に塗る薬)の3つでした。イエスが神によって聖別された王であり、やがて神の子として死を迎え、のちに復活するという未来を見据えての贈り物です。

生まれたばかりの幼子に役立つ贈り物とは到底思えませんが、その人の一生を見通した上で、その生きざまにもっともふさわしい贈り物を用意したと考えれば、これほど的を得た象徴的な贈り物はないでしょう。

オー・ヘンリーの『賢者のおくりもの』は、このよく知られたクリスマスの逸話を下敷きにしています。

若く貧しい夫婦が、クリスマスの夜、相手を思って用意した贈り物。そのためにそれぞれが払ったとんでもなく大きな犠牲。その結果、互いが用意した贈り物は、相手にとって意味をなさぬ無用の長物となってしまうわけですが、それでもその役に立たぬ贈り物は、ふたりのこれまでとこれからの生きざまを象徴する忘れられない逸品として、心に刻まれもするのです。

相手のために、もっとも大切なものを投げうったふたり。けれど、失ったものと引き換えに彼らが手にした精神的な喜びは、きっとその先の人生を長く照らし続けてくれるに違いありません。だからこそ、愚かな彼らふたりが、しかし誰よりも賢者だったと記されているのでしょう。

リスベート・ツヴェルガーの絵は趣があって、ひとつひとつが絵画のようです。裏表紙の幸せそうな夫婦の絵も、ぜひ忘れずに見て下さいね。

 

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