この本をかくして
文・マーガレット・ワイルド 絵・フレヤ・ブラックウッド(岩崎書店)
戦争がやってきて、町も家も、本も焼かれ、国から追われることになってしまった人々。ピーターのお父さんは一冊の本を「宝物」と称して、ひそかに隠し持ったまま旅を続けます。それは民族の始まりを記した本。自分たちが何者で、どこから来たのか、そのルーツと誇りは決して奪われてはならないし失ってはいけない、とお父さんは言います。しかし過酷な旅が続く中、鉄の箱に入った重たいその本を持ち歩くことは次第に困難になっていき…。
理不尽な武力を前にしても決して屈しようとしない精神。人間の尊厳がいかに重たいものであるかをこの本は教えてくれます。同時に、非常に重たいそれを持ち続けることがいかに困難を極めるか、ということも。
ピーターがどのようにしてその本を守ったのか、受け継ぐ、引き継ぐということについても思いをめぐらせながら読んでみてはいかがでしょう。