クマと少年
作・あべ 弘士 （ブロンズ新社）
ともに母さんのおっぱいを飲んで兄弟のように育ったアイヌの少年と子熊のキムルン。アイヌには、ヒグマの仔を人間の子供と一緒に育てた後に、屠殺して神の国へ帰す「イオマンテ」という儀式があります。自然の中で、人間が他の生き物のいのちをいただきながら生きていることへの感謝の気持ちを山の神に捧げる祭りです。ところが、いよいよキムルンが捧げられることになったイオマンテの前の晩、キムルンは少年の前から姿を消してしまい…。
「あらしのよるに」などの絵でお馴染みのあべ弘士さんによる力強い大胆な絵が、広大な自然の中で生きるアイヌの人々の世界へとぐいぐい私たちを引き込んでくれます。８年の歳月を経て再会した少年とキムルンが選んだ道とは…。自然への畏怖心、そしてめぐる命に対するアイヌの人々の深い信仰心が心に残ります。
