満月をまって
文・メアリー・リン・レイ 絵・バーバラ・クーニー (あすなろ書房)
少年の一家は山の中でかごを作って暮らしています。トネリコの木を切ってリボンのように薄く削り、そうしてかごを編むのです。満月の日が来ると、父は町へ行ってかごを売り、そのお金で必要なものを買ってきます。それからまた一カ月、山の中でかごを作って暮らすのです。
父が作るのは丈夫で美しい、いつまでも使えるかご。少年は父の仕事に誇りと憧れを持っていました。ところが9歳になったある日、父に連れられ初めて町へ行った少年は、そこで思いもかけぬ心ない言葉を投げつけられて…
いわれのない差別や偏見で誇りを傷つけられたとき、それでも立ち続けるためにいったい何をよすがにするか―――9歳の少年が葛藤の末に辿り着いた答えは何だったのか、ぜひ絵本をめくって感じ取ってみて下さい。抑制のきいた文体とバーバラ・クーニーのどっしりと存在感のある絵が、いつまでも終わらぬ余韻を物語に与えてくれます。
丈夫で美しい、いつまでも使えるかご。
かごを編むとは、心を編むことなのかもしれませんね。