なつのいちにち
作・ はた こうしろう(偕成社)
夏の日の、あの目も眩むような強い光、草いきれ、降りそそぐセミの声。どこまでも伸びていく真っ白に乾いた道と、同じくらいどこまでも続いていくと思えた自由な日々。
子どものころの夏休みの思い出は、ピースを失くしたパズルのように断片的ではあるけれど、その代わりとてつもなく強烈です。ギラギラと照り付けていたあのときの太陽の日差しのように。
そんな幼い日の遠い記憶を、まるで昨日のことのようにまざまざと思い起こさせてくれる絵本『なつのいちにち』。
自由と、夢と、達成感と、身体の底からこみあげてくる爆発的な嬉しさ、楽しさ、爽快さ。
そんな日々を、実感として知っている人もまだ知らない人も、ページをめくれば誰もが主人公と一緒になって体験した気持ちになれる稀有な絵本なのです。
暑さ指数が警戒レベルを超えるのが当たり前になってしまった昨今では、もはや絵本の中でしかこんな世界は味わえないのか…そんな一抹の寂しさも感じつつ、『なつ』の素晴らしさを、ぜひこの絵本とともに“実感”してみてほしい。