今月のおすすめ絵本

にいさん

 作・絵 いせ ひでこ(偕成社)

そのエキセントリックな色彩と筆遣い、「耳切り事件」などのセンセーショナルな出来事、あるいは精神病院で過ごした晩年などから、ときに『狂気の人』とも称されるヴィンセント・ヴァン・ゴッホ。

彼の絵に込められたあの激しさ、繊細さ、鋭敏さ、率直さ、そしてあの凄まじいほどのむきだしの孤独と、その裏返しのような無垢な愛情。それらすべての源泉は、幼い頃、弟テオと共に過ごした故郷オランダの北の空の光と麦畑の中にあったのではなかったか。そしてその大切な原風景を、生涯を通じて共有しあった兄と弟だからこそ、あれほどに深く魂が結びついていたのではないか。

そんなことを考えさせられる絵本でした。

 

兄を喪った弟テオの、痛ましいほどの慟哭と深い愛に胸がいっぱいになります。残酷なほどに美しい空と麦畑の絵も素晴らしい。ぜひ手に取って、絵本全体から滲み出てくるものを感じてほしい。

でも可能なら、気持ちがしっかりと落ち着いているときに読むのがいい。それほどに、引きずり込む力が強い物語だという気がしています。

 

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