おおきいかさ
文・エイミー・ジューン・ベイツ 絵・ジュニパー・ベイツ(化学同人)
おおきい傘。やさしい傘。
傘は、腕を広げるのがすき。だれかを助ける場所になるのがすき。
人でも動物でも誰が入っても何人何匹何頭入ったって大丈夫。困っている人がいれば、どんどん大きく広がる傘。
やがてページいっぱいにひろがった傘の下には、老いも若きも人間も動物も、病気や障がいのあるなしも、国や人種や職業の違いも一切が関係なく、何もかもが一緒くたの大賑わい。それでもみんな安心して過ごしている。その中央で、ひとり誇らしげに傘の柄を高く掲げ持っている子ども…。
多様性、と、かしこまって言ってしまうと難しく感じるけれど、誰かが誰かにやさしくするだけで、簡単に絵本の世界が現実の世界になるんじゃないか、と思えてきます。
自分の決めつけで物事をはからない。いろんなかたちをやわらかく受け止める。鵜呑みにするんじゃなくて、探り合う。すり合わせてゆずり合う。―――当たり前にできそうで実はなかなかできないことではありますが…。
おおきい傘を持つ子どもがひとり、またひとりと増えていく、そんな未来をつくるためにも、おとなの我々がまずは傘を広げなければと思いますね。