おじさんのかさ
作・絵 佐野洋子 (講談社)
大切すぎて使えない。その気持ち、よくわかります。
大事なモノ、大切なモノは、大事に仕舞って眺めているだけでも楽しいし嬉しい。汚したり壊したりなんかしたくない。
でも本来の使い方をしてこそ、もっともっと素敵なモノになるかもしれない。もっともっと楽しく嬉しくなるかもしれない。もっと愛着が湧くかもしれない。
これは、大事にしすぎて決して開いたことのなかった傘を、ようやく、初めて、雨が降る日に開いて差してみたおじさんの話。
「あめがふったらポンポロロン、あめがふったらピッチャンチャン」
傘に当たる雨音の何と心弾むこと。濡れた傘の何て立派で素敵なこと。おじさんと傘が、本当の相棒になった瞬間かもしれませんね。