今月のおすすめ絵本

おもいのたけ
 文・きむらゆういち  絵・田島征三(えほんの杜
「思いの丈」を、上手に誰かに伝えられますか?
言いにくいことって誰しもあって、それを何となく抱え込み、抑え込み、我慢し続けて過ごしていると、やがて溜まりに溜まった思いの丈がある日突然大爆発…なんてことになりかねませんよね。それはわかっているけれど、なかなか吐き出す術がないのが思いの丈の厄介なところ。言ったら言ったでつい言い過ぎて、かえって嫌な気持ちになったり、恥ずかしさから自己嫌悪に陥ったり。そんな、思うに任せぬ思いの丈の厄介さ、憂鬱さ、あるいはドロドロとした闇の部分が「オンドロロン オンドロロン」というおどろおどろしい呼び声にのってじわりじわりと呼び覚まされていくようです。
この物語のユニークなところは、言ってみたらスッキリした!では済まさないところ。言い放った以上はそれなりに、代償も支払わねばならないのです。それは羞恥だったり後悔だったり恐怖だったり気まずさだったり…。言葉は必ず、自分に跳ね返ってくるのです。それらをちゃんと受け止めて昇華した上での、「なにごとも なかったような」日常、なんですよね、きっと。
そう考えると、人間ってなかなかたくましい、ふところの深い生き物なのかもしれないなぁ、なんて思ったりもします。あ、物語の登場人物は人間ではなくて動物でしたけれどね…。
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