おもちゃ屋へいったトムテ
文・エルサ・ベスコフ 絵・ささめやゆき (福音館書店)
人形づくりの家の床下に、小人の一家が住んでいました。
ある日、いたずらっ子の小人のヌッセが新しい人形と間違えられて箱に詰められ、町のおもちゃ屋へ「商品」として送られてしまいます。
店のショーウインドウの真ん中に飾られる羽目になったヌッセは、じっと息をつめて人形のふりを続けますが、さすがに疲れて思わず大あくび。ところがその様子を小さな男の子に見られてしまい…。
床下に住む小人(トムテ)は、家族に幸運をもたらし仕事を助けてくれる妖精と言われ、スウェーデンではサンタのような存在として愛されています。
ヌッセのいたずら心にはハラハラさせられっぱなしですが、彼の機転の利いた立ち回りは幼い子どもたちへの信頼と愛情に満ちていて、その役回りはまさしくサンタのよう。そう、サンタクロースって誰なのかが問題なんじゃなく、愛情というその心根こそをサンタと呼ぶのではないかしら。
そんなことを考えさせられるやさしい味わいの物語です。
絵本作家として小人を描かせればピカイチのエルサ・ベスコフですが、このたびはお話のみ。ささめやゆきさんの素朴でやわらかい絵が色を添えています。