今月のおすすめ絵本

パンフルートになった木

 文・巣山 ひろみ  絵・こがしわ かおり(少年写真新聞社)

広島の千田小学校の校庭に立つ一本の木、カイヅカイブキ。

1945年8月6日の原爆を生き延び、その後70年以上を子ども達とともに過ごしてきた、被爆樹木です。数年前、そのカイヅカイブキがついに枯死してしまったとき、何とかこの木を子ども達の未来のために生かす方法はないかと、たくさんの人々が知恵を絞りました。木は3年をかけてパンフルートとしてよみがえり、今は千田小学校のパンフルート合唱隊の子ども達により、平和へのメッセージを伝える楽器として演奏されています。

広島在住の児童文学作家、巣山ひろみさんは、新聞で偶然この記事を見つけて心惹かれ、幾度も取材を重ねながらこの絵本を作られました。

物語は千田小学校の被爆当時の様子も描きます。あの時亡くなったたくさんの子ども達の命、そして、その無残な景色の中で芽吹いたカイヅカイブキの小さな命、それらが混然と溶け合いながらの長い年月が、やわらかなタッチの絵でゆっくりと語られます。

カイヅカイブキの木はもうありませんが、子ども達がパンフルートを鳴らすとき、昔そこに立っていた木と、かつて確かに生きていた子ども達の魂とが、ともに風になってパンフルートの音色を世界へ運んでいくのかもしれませんね。

※広島県平和推進プロジェクトのWEBサイト「国際平和拠点ひろしま」で詳しく紹介されています。詳しくはこちらへ⇒被爆樹木とパンフルートと合唱隊

Homeへ         収録絵本一覧へ

inserted by FC2 system