今月のおすすめ絵本

ルリユールおじさん

 作・いせ ひでこ (講談社)

ルリユールとは、古びてバラバラになってしまった本を繋ぎ合わせて修復する職人。フランスではいわば『本のお医者さん』のような人。大切な植物図鑑が壊れてしまったソフィーは、パリの街角にひっそりと佇むルリユールの店を訪ねます。

―――新しい本を買うのではなくて、この本を直したいの。

長い間、大事に大事に読み込んでボロボロになってしまった本のページを、ルリユールは一枚ずつ丁寧に切りそろえ、綴じ直し、新しい表紙をつけ、その背に金箔で新しいタイトルを打っていきます。持ち主のためだけの特別な本として。その様子はまるで、一度死んだ本がもう一度生まれ変わり、あらたな命を生き直すためのおごそかな儀式のよう。ルリユールの手は、本の再生をつかさどる魔法の手なのです。

物語の核となるアカシアの老木の絵が見事です。樹齢400年を超えるこの木は、長い歴史と伝統を持つルリユールの存在そのもの。そしてソフィーがルリユールに贈る小さなアカシアの芽は、ソフィーが種から自分で育てたもの...。

こんなふうに手と手から生み出される何かが人の心をつなぎ、未来へと続いていく―――そんな豊かな風景が、美しい絵とともに綴られています。

「もう一度つなげる」という意味を持つ言葉、ルリユール。続編の『大きな木のような人』も、ぜひ読んでほしい素敵な絵本です。

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