さっちゃんのまほうのて
文・のべあきこ しざわさよこ 先天性四肢障がい児父母の会 絵・たばたせいいち (偕成社)
さっちゃんの右の手には生まれつき指がありません。
けれどさっちゃんの生活の中で、そのことはさほど重要なことではなかったはずなのです。ある出来事が起こるまでは。
幼稚園のお友達との些細なケンカの中で投げつけられた、思いも寄らぬ残酷な言葉。
さっちゃんは初めて、なぜ自分の手は皆と違うのかとお母さんに詰め寄ります。そしてこれから先の、大人になった自分の姿を当たり前に想像することが出来ない不安に、さっちゃんの幼い心は打ちひしがれてしまいます。
言葉には魔力があります。幼稚園のお友達が激情に駆られて投げつけた残酷な言葉は、文字通りさっちゃんをがんじがらめに縛りつけてしまいました。けれどそんなさっちゃんの心をすくい上げるのも、やはり言葉なのです。お母さん、お父さんがさっちゃんに注ぐ言葉の、まっすぐな魔力。
「こんな手、いやだ」と泣いたさっちゃんが、不安や葛藤を経て、やがて自分の手に誇りを持つようになるくだりは、子供らしいエネルギーに満ちていて清々しさを感じます。
これが自分、とありのままを受け入れたとき、むしろ今まで思いもしなかった未知の力が、化学反応のように沸き起こってくるのかもしれません。
なぜ「まほうの手」なのか、タイトルが持つ余韻にも、ぜひ思いを馳せてみて下さい。