そらいろ男爵
文・ジル・ボム 絵・ティエリー・デデュー(主婦の友社)
自作の空色の飛行機で空を飛ぶのが大好きなそらいろ男爵。けれども戦争が始まって、男爵も戦場へ行かねばならなくなりました。
何か、爆弾の代わりになるものはないだろうか。考えた末に男爵は、家の本棚に並んでいた分厚い百科事典や詩集や小説を、飛行機に積み込んで出撃します。
敵の兵士たちは空から本が降ってきてびっくり。読んでみると面白くて面白くてやめられません。敵の隊長は攻撃命令を出すのも忘れて『戦争と平和』を読みふけってしまうという有り様。
男爵も作戦を練ります。小説の上巻を味方の陣地に、下巻を敵の陣地に落として、互いに話をするきっかけを作ったり。
しかしやがて、男爵の蔵書も尽きてしまいました。長引く戦争をやめさせるため、男爵が最後に空から落としたものとは、さて一体…?
第一次世界大戦開戦から100年目の2014年にフランスで刊行された絵本です。そして現在、2022年2月24日、ロシアがウクライナへの侵攻を開始しました。そらいろ男爵は、またしても戦地へ赴かねばなりません。人間はなぜこうも簡単に大事なことを忘れてしまうのでしょう。
作中、敵の隊長が読みふけるのが、ロシアの小説『戦争と平和』であるところが、今読み返すと皮肉ですね。