タケノコごはん
文・大島渚 絵・伊藤秀男 (ポプラ社)
戦争は正しいと教えられ、そのことに何の疑問も感じることのなかった子どもたち。将来の夢は兵隊さん。
そんなとき、軍人だった「さかいくん」のお父さんが戦死したと知らせが入り、その日を境に、強くて朗らかで気さくな子だった「さかいくん」は変わってしまいます。
映画監督の大島渚氏が、自らの子ども時代を、小学生の我が子にむけて語ったもの。
当時小学生だった「パパ」の目から見た「さかいくん」のことが、余計な心情をはさまずに淡々と語られていきます。
戦争の影はひたひたと子どもたちの日常を脅かしつつあるのですが、まだその異常さ異様さに、当の子どもたちは気づいていません。大人はだれも、何も言いません。
そんな中、「さかいくん」だけが、そのおかしさを肌で感じ取ってしまったのでしょう。
もやもやとした何かを言葉にする術もなく、鬱屈した気持ちを抱え込んでいた「さかいくん」。
圧巻は、そんな「さかいくん」が、大好きな先生が召集されると知ったときに先生に向けて言った言葉と、その言葉を聞いた先生が見せる、表情。
胸が抉られるような場面です。
『そして、パパはそれまでずっと、日本の国が戦争をすることが、ただしいとおしえられてきたんだけど、そのときはじめて、やっぱり戦争はしないほうがいいのかなあ、とおもったのでした。』
子ども時代の「パパ」が、自分の心で直接感じたこと―――。
絵本を通じて、我々もたくさんのものを感じ取ることができそうです。