今月のおすすめ絵本

とっときのとっかえっこ 

 文・サリー・ウィットマン 絵・カレン・ガンダーシーマー (童話館出版)

ネリーとお隣のバーソロミューおじいさんは大の仲良し。物語は、赤ちゃんだった小さなネリーの成長の様子が、バーソロミューおじいさんとの関わりの中でユーモアたっぷりに描かれます。

秀逸なのは、ネリーの成長に合わせて、常にその底流にバーソロミューおじいさんの老いがさりげなく描かれていること。よちよち歩きが出来るようになったネリーと、杖が必要になってきたバーソロミューおじいさんとが互いに手すりにつかまりながら階段を上る場面は象徴的です。緩やかに重なり合っていたかに思われた時間は、このシーンを境にネリーの成長(上昇)とバーソロミューおじいさんの老化(下降)とに対比されつつ進んでいきます。少しずつ立場が逆転していくふたり…。

「とっときのとっかえっこ」というタイトルの妙に唸らされます。(原題は「A SPECIAL TRADE」訳は谷川俊太郎さん)

成長と老い。人である以上、避けることのできない時の流れ。ことに、何かしらの悲哀や諦念を抱かずにはいられない老いという現象を、いともたやすく軽々と飛び越えてみせるネリーの愛情が、すがすがしく胸に残ります。

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